県北芸術祭の機運が高まるJR日立駅
 廃校や海岸などを舞台にした現代アートの祭典「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」まで1カ月を切った。県などで組織する実行委員会は公式ガイドブックを発売し、開催を必死にアピールする。目標来場者30万人をクリアできるか、注目されそうだ。

 芸術祭は9月17日~11月20日の65日間、「海か、山か、芸術か?」をテーマに、日立市や高萩市など6市町で開催される。東京・六本木ヒルズにある森美術館長の南條史生氏が総合ディレクターに就任。展示空間も含めて作品と捉える「インスタレーション」と呼ばれる作品を中心に、約85組100作品が展示される。
 実行委によると、すでに現地入りした海外アーティストもおり、地域住民や制作補助サポーターも参加し、作品作りが進行中だ。サポーターは随時募集しており、実行委のホームページなどから応募できる。
 23日には公式ガイドブックが発売された。見どころ紹介や参加アーティストの対談のほか、交通情報や周辺飲食店などの旅情報も掲載されている。A5判232ページで、1部1300円。首都圏と県内を中心に1万6000部印刷した。
 主な展示を自由に見て回る「パスポート」の前売り券(一般2000円、学生・高齢者1000円)は7月から発売されている。目標1万枚に対し、すでに8000枚売れており、実行委は「目標を大きく上回りたい」と意気込む。

総事業費6億6000万円、県負担は4億7000万円
 芸術祭は、人口減少の進む県北の振興や経済活性化、交流人口の拡大が目的。県が主導し、総事業費6億6000万円のうち4億7000万円を負担する。残りは国の助成金やチケット収入でまかなう。
 事業費のうち、ディレクターなどの人件費、作品の製作費、アーティストの滞在費などを含めた企画制作費が4億7100万円を占める。ほかに実行委の運営管理費5400万円、広報関係費4800万円などを見込んでいる。
 来場者目標は無料を含め30万人に設定した。郊外型、屋外型展示で共通している新潟の「大地の芸術祭」を参考にしたという。新潟は2015年には50万人以上が来場したが、初回の00年は16万人だった。今回は秋の観光シーズンと重なることから相乗効果を期待し、その2倍程度を掲げた。
 交通渋滞も課題になりそうだ。県北地域は山道や1車線道路が多い。袋田の滝(大子町)や竜神大吊橋(常陸太田市)の周辺では渋滞が予測されており、実行委は迂回(うかい)路の案内などで対応するという。
 経済効果などの試算はしていない。実行委は「初めての開催のため、走りながら形を整えている。実施後にどれだけの効果があったかを検証する」と話している。
(出典:毎日新聞2016年8月27日茨城地方版)