朝日新聞(2016/9/13)
県北芸術祭の公募作家・柚木恵介さんは、今夏約2ヶ月間をかけて、県北6市町を旅し、そこで出会った人々と物々交換を繰り返しました。その記録は、北茨城市の旧富士ケ丘小学校に展示されます。
柚木さんの活動の模様が、9月13日付けの朝日新聞に掲載されました。

人とモノの出会いを作品化 県北芸術祭17日開幕
朝日新聞(2016/9/13)

県北6市町の豊かな自然を舞台に17日に開幕する現代アートの祭典「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」の準備が進んでいる。7月下旬から9月初旬に6市町を自作の屋台で巡ったのは、柚木(ゆのき)恵介さん(37)だ。住民らと物々交換しながらの旅で、人とモノの偶然の出会いを作品化し出展する。
鹿児島県出身の柚木さんは、デザインを専攻し東京芸大大学院卒。一時、民間会社に勤めたが創作欲が強く、木彫の道に進んだ。だが、「作品を見に来るのは、興味のある人や身内だけだった」と悩んだ。
 「アートに興味のない人ともコミュニケーションを取りたい」と行き着いたのが物々交換だった。2009年秋、東京・上野公園の真ん中に屋台を持ち込んだ。手製の手ぬぐいからスタートした物々交換は、1週間で約80人の手を経て、ネックレスに変わった。「交換するモノに込めた重みや余韻こそアート」と物々交換の旅が始まった。国内だけでなく、タイにも足を延ばした。
ログイン前の続き県北芸術祭での製作は7月19日に北茨城市をスタート。高萩市、日立市、常陸太田市、常陸大宮市、大子町の順に巡った。最初の無線操縦のヘリコプターがブランデーに変わり、その後、ゲーム機がボールペン1本に置き換わった。
最終盤の8月31日。大子町左貫と初原地区では戸別訪問もした。讃岐うどんをホーロー鍋と交換したのは渡辺博明さん(69)。「突然でびっくりしたが、蔵の中で眠っているものを生かせた。どんな芸術になるか興味津々だね」と笑顔で屋台を送り出した。物々交換では、持ち込んだ人と品物をカメラで撮影。その一コマ一コマをつなげて、屋台に張り出している。
最終日の4日まで37日間で、交換者は計436人。柚木さんの手に木製の砂時計が残った。人とモノの出会いは、芸術祭期間中、旧北茨城市立富士ケ丘小に展示し、その間の交換も検討している。柚木さんは「物々交換はコミュニケーションを取り合った歴史。映像も含め、偶然が作り出したストーリーを楽しんで欲しい」と話している。

<県北芸術祭> 「海か、山か、芸術か?」をテーマに17日~11月20日の65日間、県北6市町で開催する。県北振興や交流人口の拡大が目的。会場は①五浦・高萩海浜(北茨城市・高萩市)②日立駅周辺(日立市)③奥久慈清流(常陸大宮市・大子町)④常陸太田鯨ケ丘(常陸太田市)の4エリアで32会場。海岸や道の駅、廃校などを活用、国内外から85組のアーティストが参加する。空間も含めて作品ととらえる「インスタレーション」と呼ぶ作品が多い。「パスポート」の前売り券(一般2千円、学生・65歳以上1千円)、公式ガイド(1300円)を発売中。問い合わせは県北芸術祭実行委員会事務局(県県北振興課内029・301・2727)。

柚木恵介さん(日立シビックセンター)

柚木恵介さんの物々交換プロジェクト(日立シビックセンター8月4日)

C-05 P105 柚木恵介(ぶつぶつ交換プロジェクト)
北茨城市旧富士ケ丘小学校3階:北茨城市関本町富士ヶ丘756-1