ノアのバス
ノアのバス(テア・マキパー)
日立駅からシビックセンターへ行く途中、広場の外側に置かれた地元日立電鉄のバスの中では、ウサギ、ロシアンリクガメ、モルモット、レースポーリッシュ(鳥)が暮らしています。
植栽されているのは、日立市に自生する植物です。
都市空間の中に突如として出現した動物・植物たちの空間は、私たちに自然との共生のあり方を考えさせます。フィンランド出身のアーティスト、テア・マキパーによって、バスは「ノアのバス」と名付けられ、海から山へ逃げる方舟としてイメージされています。
*この作品は日立市かみね動物園、茨城県造園建築業協会の全面的な協力により実現しました。動物たちはかみね動物園フレンズが毎日ケアを行っています。

ノアのバス
スペシャルトーク「震災後の日本で問う、自然と人間社会の関係」より
ティア・マキパー✕中沢新一✕金澤韻

金澤:マキパーさんは昨年、この芸術祭のリサーチで県北に滞在しました。海側を中心に、多くの人々に会い、様々な場所を訪れました。

マキパー:日本では大きな地震がありましたね。その影響について興味があり、人間もですが、動物たちがその時どうしていたのかということを気にしながら調査をしてきました。県北より北の福島にも行ったのですが、そこで見た防潮堤の印象は強かったです。防潮提を作る取り組みは心理的には理解できるものの、私にとっては違和感が拭えませんでした。海と陸との間に壁を立ててしまうことで、何千年にもわたる、人々の生活と海との行き来が閉ざされてしまうということすよね。(中略)
防潮堤は日本の「減びを受け入れる文化」を壊してしまっているように感じます。「海は私たちの家を壊すかもしれないが、ここに住みたい」という考え方にも表われていますが、そうした精神は日本文化の美しいところです。

金澤:県北芸術祭で出品される作品について話をうかがいたいと思います。この「バイオトープ・トウー・ゴー」シリーズは、もともと乗用車を使った作品ですね。

マキパー:はい、このシリーズは数年前にデンマークのコペンハーゲンで始まりました。街中にあるコインパーキングに乗用車を置き、植物や動物をその中に棲まわたるという作品です。仮住まいではありますが、動物も植物もとても元気で、私のペットのスカンクもそこで過ごしました。この小さな自然を維持するために皆さんに駐車料金を入れていただく。つまり車や人間のためのシステムを使って、富や幸せを動物や大型物に与えようというコンセプトです。

金澤:県北芸術祭ではアップグレードして、バスを使ってこの作品を実現することになりましたね。海から山へ向かって動物たちが逃げていくイメージで、「ノアのバス」というタイトルがつけられました。日立駅前の立派な都市空間に置かれているのですが、植物が生い茂り、 ウサギとカメと鳥が棲んでいるバスは強烈なインパクトです。

A-11 P63 ティア・マキパー(ノアのバス)