JR常陸多賀駅前は、オレンジ色の毛糸によって、日々侵略されています。茨城県北芸術祭の参加アーティスト、ハイパーニットクリエーター・力石咲さんの作品です。力石さんと地元サポーターは、“ニットインベーダー”と化し、多賀の街を変え続けているのです。
その取組を、力石さん自身がfacebookで、私たちに分かりやすく語りかけてくれています。いばらきの自然や芸術・文化に造詣が深い山本哲士さんの投稿も素敵です。
力石咲さんのfacebook:https://www.facebook.com/saki.chikaraishi.5
山本哲士さんのfacebook:https://www.facebook.com/satoshi.yamamoto.568/posts/1134842399936828?pnref=story
力石咲ニットインベーダー014
力石咲さん

◇《ニット・インベーダー》について◇

《addi UFO》と呼ばれる上空の編み機が、キャトルミューティレーション(米国などで見られる、牛が血や内臓をすべて取り除かれた状態で見つかる怪奇現象。宇宙人の仕業と考えられている。)をして周りのものを編み包む。
編み物というものは不思議なもので、細い糸から太い糸を作ってより大きなものを編むことができる。最初 は1本の細い糸だが、どんどん太くなって広がって、地球までも簡単に編み包むことを目的としている。

ニットによって一変した景色の中で、街と人、人と人との新たな関わり合いが生まれることを願う。 インベージョン(街を編みくるむこと)は日々徐々に行われる。この作業は街の人と協働で行うことが理想である。街に対して普段受動的に過ごしている私たちは、この作業によって能動的に関わることができ、街を知ることができるからだ。
《 addi UFO》とわたし、そしてインベージョンに参加する人すべてが「ニット・インベーダー」なのである。
これまで丸の内(東京)、中之島(大阪)などで展開してきました。
力石先ニットインベーダー
◇UFOが降り立っている場所◇

今回《addi UFO》が降り立っている場所はもともと銀行だった場所です。JR常陸多賀駅からまっすぐのびる通りを歩いて3分ほど。
2500✕2800ミリの大きな窓が3つあり、UFOは堂々とその姿を顕にしています。
うっすらと「◯◯銀行」と表記が残る扉が入り口。その前に頭上にも注目してください。
入り口を入ってすぐ右にはATMコーナーだった場所があります。
その向こう側、本来なら覗けない秘密の部屋も覗いてみてください。
大きな窓も毛糸でインベージョンされています。
色、形状、位置が何を表しているか、自由に想像してみてください。

展示時間は毎日9:30~17:00ですが、実はUFOは闇の中でも煌々と浮かび上がっています..
夜間や早朝など、時間帯で印象がまったく違います。建物内に入ることはできませんが、ぜひ24時間目撃しに来てほしいです。

写真は見に来てくださった 山本 哲士 (Satoshi Yamamoto)さんと、同じエリアで展示をしている 加藤 誠洋 (Nobuhiro Kato)さん、そしてサポーターの 鈴木 智子 (Tomoko Suzuki)さんが撮影してくださったもので、とても気に入っており、拝借しております。
力石咲ニットインベーダー
力石咲ニットインベーダー
力石咲ニットインベーダー

◇インベージョン場所◇

現地下見時に地元の人々へのヒアリングを行い、インベージョンエリアを選定しました。

常陸多賀の今むかし。昭和7年ごろの写真や昭和9年発行の写真と、実際に自分で歩いてみた今の常陸多賀。この80年間で街の風景は大きく変貌しています。人々の記憶の中に色濃くあるのは、常陸多賀がいちばん元気だったという昭和40年代後半から50年代前半の風景のようです。日立製作所多賀工場に勤務する人で朝晩の駅には人が溢れかえり、デパートや映画館、 多賀コンパなる社交の場が流行り、商店街には福引抽選器のガラガラ回る音。人と人の繋がりも豊かだったといいます。

地元の人々が思う常陸多賀のシンボルスポットやエリア、個人的に思い入れのあるスポット、そして今はなきそれらの跡地をニットインベージョンし、当時の雰囲気をモコモコと醸し出す65日間にしたいと思います。
また過去を甦らすだけでなく、未来に向けて地元の人々が発信していきたい常陸多賀の推しスポットもインベージョン。街を訪れる人々を誘導するようなものになればと思っています。

写真はすべて、9月19日時点のインベージョンの一部です。
力石先ニットインベーダー
力石咲ニットインベーダー
力石咲ニットインベーダー
力石咲ニットインベーダー

◇糸の色◇

糸の色は、オレンジです。その理由は3点あります。
・地域の方へのヒアリングで、「常陸多賀を色に例えると何色ですか?」と質問したところ、オレンジと答える方が多かったからです。日立製作所の企業カラーがオレンジなことがやはり影響しているようです。
・日立市という名前は、水戸光圀がこのあたりの海上から昇る朝日の素晴らしさに感銘を受けたことに由来すると言われています。朝日=オレンジのイメージがあります。
・昔はこのあたりに柿の木がたくさんあったようです。秋になると、柿の色が街を彩っていたようです。
ほんのりとかすかにピンクがかったオレンジ。光の具合によってピンクがほのかに顔を出すかもしれません。
力石咲ニットインベーダー
力石咲ニットインベーダー

●オレンジの色糸=常陸多賀(山本哲士さんの投稿)

オレンジや朱の色って、鮮やかでお日様を思わせる元気なイメージだけれど、一方では、工事現場や注意書の看板みたいなイメージにも。
(幕末日本の浮世絵が西欧に渡った時、印象派のルノワールたちは、浮世絵の中の「朱」の色(たとえば鳥居の色、着物の色)にとても感激したのだそう。その頃、フランスでは、そんな朱の色は、港の鉄さびの色のようにしか思われていなかったとか・・、なんて思い出す。)
常陸多賀で出会ったSaki Chikaraishiさんのニットのオレンジの色たちは、いろんなところでモコモコ成長を続けている。
そして、このオレンジは不思議に、商店街の中では、「町と作品をつなぐ(色)」ようだ。

カタカタカタカタとオレンジの糸がよられていくのは、なんともユーモラス。
生産されたニットは、地域の人たちの手も加わり、どんどん町の中へ広がっていく。

朝早い時間、始発くらいの電車を待つ男性。
作品は座布団がわりにもなっていた。
やさしいなぁと思った。

写真は18日の朝早くの頃と、28日の午後のもの。
*10月2日は【Tabi-ぶら 常陸大宮&大子(芸術祭えんそく)】
https://www.facebook.com/events/1126924530721706/
力石咲ニットインベーダー
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