伊藤公象<茨城県北芸術祭・理想のまちづくりへ> 茨城新聞(2016/5/15)
記念撮影
オープニングレセプションでの記念撮影(ブログ管理者撮影 2016/9/16)

■理想のまちづくりへ
 茨城県の県北地域は、都心に近く飛躍的に発展する県南地域と対比されることが多い。しかし、魅力度最下位の茨城を現代アートによる逆転の発想で上位に格上げする一翼を担う可能性を秘めている。その意図から9月に開幕される「茨城県北芸術祭」の総合計画で、参加作家と作品の装置や展示、予算や受け入れ態勢を担当するプロジエクトチームの役割は大きくて重い。
昨年(2015年)11月29日付「時論」では、その全体をアートな空間として目を見張りたいと記した。そして9月の開幕まであと3カ月余りに迫り、その成果に期待は高まっている。

四方幸子キュレーター そこで今回は、南条史生総合ディレクターの両輪として、共にプロジエクトを推進する四方幸子キュレーターと金澤韻(こだま)アソシエイトキュレーターに抱負やアプローチなどを伺った。両氏はそれぞれにグローバルな視野でアートのジャンルを横断し、メディア芸術表現として映像やアニメ、マンガなど現代芸術の領域を広めて国際的に活躍されていて、四方キュレーターは県北を地層、気候、生態系、人々、そして文化の循環の中に捉え、芸術祭では21世紀の現在、情報ネットワークやアーティストなどグローバルにさまざまなものを接続していく視点を持ち込み、地域活性化の場を生み出し、新たな創造や興隆を活性化させ、地域の人々の可能性を開いていく契機になると語る。
 大子、常陸大宮、常陸太田を担当し、八溝山、久慈川や植生(漆、コウゾ)、林業全般、磯出大祭礼や発酵文化を、また鯨ケ丘商店街を中心とした自主的な文化によるまちづくり、佐竹氏など非常に興味深い人が多いことを挙げた。そうした立ち位置から意欲的で行動力を伴い、何度も各市町へ足を運び、作家とのコミュニケーションはもとより、作品設置場の雰囲気や伝統と現代を結ぶ創造的な空間設定に関与、海に面した場の設定、里山における廃校の活用、そして山中でコーヒーやパン、ケーキの作り人までを芸術祭に引き込む。

金澤韻(こだま)アソシエイトキュレーター それはまた金澤アソシエイトキュレーターも同様で、繊細でナイーブな感性とパワーを合わせ持って日立、高萩、北茨城へと向かい、地域の優れた立地環境を重視し、「ジオパーク」(大地の自然豊かな公園)の地球科学的視点から興味を深める参加作家が多いことに触れ、その「地」の日立鉱山、そして日立製作所など世界的企業の母体となった深い歴史の含蓄を踏まえた上で、そのような近現代の文脈をテーマに作品を構想する作家がいること。また、岡倉天心の後半生の拠点となった大きな意味から、インドの作家がアジア共通の問題意識をこの文脈から感じ取り作品に昇華したい、ということを挙げた。
 国際的に第一線で活躍する作家たちの知識、洞察、感性に捉えられるものを通して、既に埋め込まれた土地の性質や歴史や文脈を浮かび上がらせ、貴重な財産として現代美術の形であらわにすると語っている。
 さて、5月9日付本紙で、2020年の東京五輪・パラリンピックに合わせた「文化プログラム」の記事が載った。国際オリンピック委員会(IOC)が次期開催国の東京大会で4年間にわたってイベント20万件、アーティスト5万人、参加者延べ5千万人を目指すとされる。日本政府は史上最大のイベントと位置付けて支援する方針だとある。好機到来で、「県北芸術祭」のビエンナーレ方式による継続が期待される。芸術祭で理想のまちづくりを目指すことも夢ではない。

伊藤公象作品(高萩市穂積家住宅)
pearl blueの襞 ー空へ・ソラからー:高萩市穂積家住宅
■伊藤公象(いとうこうしょう)造形作家
1932年金沢市出身。笠間市在住。金沢美術工芸大学客員教授。インド・トリエンナーレ、ベネチア・ビエンナーレ国際美術展日本代表出品。90年女子美術大・大学院、2002年金沢美術工芸大学大学院専任教授を歴任。
■茨城新聞2016年5月15日付け“時論”を掲載、写真はブログ管理者が撮影